
-
所在地 東京都新宿区 発注者 東京都 設計 丹下健三 竣工 1991年3月 延床面積 381,000m2 地上階 (第1本庁舎)地上48階
(第2本庁舎)地上34階地下階 (第1本庁舎)地下3階
(第2本庁舎)地下3階


- 高層ビルが林立する新宿副都心のなかでも、ひときわ異彩を放つ東京都庁第一本庁舎。言うまでもなく東京都政の中枢機関であるこのお役所ビルは、先代の丸の内庁舎から移転して1990年12月に完成。1943年の東京都設置から数えて3代目となる都庁舎なんだ。高さ243,3メートルは、完成当時、池袋のサンシャイン60を抜いて日本一の高さを記録。しかし93年に295,8メートルの横浜ランドマークタワーに抜かれ、現在では日本で6番目の高層ビルとなっているんだ。

- 1957年に建てられた丸の内の都庁舎は、建物の老朽化や執務面積の狭さ、それに各部署が街中に分散していて、都の運営に支障をきたすほどだったんだ。加えて高度経済成長とともに、都の人口バランスが都心より西のエリアに移りつつあった。そのため人々が都庁に来朝するまでの時間を均等にするためにも、より西に位置する新宿への移転が望ましかったんだ。

- その通り。日本の建築家として最初に世界で認められ、戦後の復興とともに多くの国家プロジェクトを手がけてきた丹下健三は、05年に91歳で亡くなるまで第一線で活躍をつづけたまさに建築界の巨星。その代表作は、広島平和記念資料館、香川県庁舎、代々木体育館と枚挙にいとまがないけど、東京都庁舎はそんな彼が70代の後半に手がけた最後の大作といえるだろうね。ちなみに先代の丸の内都庁舎も彼による設計で、同じ庁舎を二代にわたって手がけたというのは、世界的にもちょっと例がないんじゃないかな。

- 70年近いキャリアの中で、彼も様々なスタイルの変化をとげているから一概には言えないけど、作品をパッと見たときのインパクト、一度見たら忘れないわかりやすさ、強いシンボル性が丹下の特徴といえるだろうね。東京都庁舎の場合、ビルの高さに比較して奥行きが短いから、実際の高さ以上にスマートに見えて、他の高層ビルとの違いを生み出しているんだ。また庁舎前の楕円状に広がる都民広場は、地理的に新宿副都心のちょうど中心点にあたるんだ。そこに立つと八方に高層ビルが見られる仕掛けになっていて、こうしたスペースづくりの巧みさも丹下ならではといえるだろうね。

- 単純に言うと、高強度の鉄柱を何本も束ねた「スーパー柱」または「スーパー梁」を使い、その骨組みだけで建物全体を支える方式をスーパーストラクチャー方式というんだ。この方式は構造的な堅牢さや防災上の安全を得られるだけでなく、余計な柱や壁を省くことができるから、建物の内部に広大なスペースを生み出すことができるんだ。東京都庁舎の場合、情報化社会の進化に対応できるよう、自由にレイアウトできるオフィス空間が求められた。そのため1棟につき8本のスーパー柱を配し、10階ごとにスーパー梁を渡すことで、建物内部の広大なスペースを確保しているんだ。

- これにはふたつのモチーフがあって、ひとつは日本家屋に見られる格子戸。そしてもうひとつは、情報化時代を象徴するIC(集積回路)のグリッドパターン。伝統と科学という相反するモチーフを使っているところが面白いよね。またところどころ四角い御影石を打ち込むことで窓と飾りの違いを曖昧にし、外壁のパターンをより複雑で奥行きのあるものにしているんだ。こうした意図を汲み取って改めて見てみると、東京都庁舎に対する印象もまた違ってくるんじゃないかな。

- イエスでもありノーでもあるといったところかな。確かに東京都庁舎のふたつに分かれた塔のような形態は、パリのノートルダム寺院の双頭とそっくりだよね。また複雑に凹凸させた外壁や、縦にスッと伸びたラインも、どこかゴシック建築を連想させる。しかし定説では、高さ243mをそのまま建てるとボリュームがあり過ぎることから、150メートルより上を二塔にわけることで、人々に与える威圧感を和らげたということになっているんだ。つまり結果としてノートルダム寺院に似てしまったということらしいけど、真意のほどは見る人の解釈にゆだねていいのかもしれないね。