フュージョンポリス

基本データ
所在地 シンガポール共和国
発注者 JTC Corporation
設計 黒川紀章建築都市設計事務所/JURONG Consultants
竣工 2008年7月
延床面積 119,375m2
地上階 24階
地下階 6階

フュージョンポリス

建設エピソード

01.どうしてできたの?

フュージョンポリスの建設地はどんなところ?
情報テクノロジー・センター「フュージョンポリス」は、シンガポール南西部のワン・ノース地区に立地しているんだ。ワン・ノース地区とは、情報通信分野におけるアジアの一大拠点を目指して、2001年から官民共同で大規模な都市開発を行っている地区で、フュージョンポリスもまた、そうした街づくりの一環として建てられたんだ。すでに多くの大学、研究機関、民間企業が移転し、様々な研究開発や産業プロジェクトを推進しているんだって。多民族国家として知られるシンガポールは、古くから多様な人種が行き交う要衝として、海運や航空のアジアのハブを目指してきた歴史がある。だからワン・ノース地区の開発もまた、ネットワークの拠点として栄えてきた、シンガポールならではのプロジェクトといえるだろうね。

フュージョンポリスの設計上の特徴を教えてください。
設計を手がけたのは2007年に急逝した世界的建築家の黒川紀章氏で、彼が最期まで情熱を注いだのがこのフュージョンポリスで、地球環境や人への負荷を極力抑え、建物の持続性をできるだけ高めるよう設計されているんだよ。シンガポールの熱帯雨林気候を考慮して、「ダブルローイーガラス」という透明度がありながら、光のみ遮断できるガラスを使っているんだ。だから外壁は全面ガラス張りという斬新な建物ながら遮蔽率(日陰率)50%以上を確保して、棟内のエネルギー消費を抑え、二酸化炭素の排出量を減らしているんだよ。また各所にそれぞれテーマを持った屋上庭園も設け、人と環境の共存を目指した黒川紀章氏の理念が、随所に体現されているんだ。 

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02.えっ!そんなドラマが?

日本の建設会社のもと、4カ国2300人の作業員が活躍したそうですね。
一人あたりの平均賃金が日本を抜いてアジアのトップに立つなど、近年、好景気が続いていたシンガポールには、海外からの出稼ぎ労働者がすごく多いんだ。フュージョンポリスの建設工事も、インド、バングラディシュ、タイ、中国の作業員約2300人が携わり、現場ではいくつもの言語が飛び交っていたんだ。たとえば全員が揃う作業前の朝礼では初めに日本の建設会社側がタイ語、タミール語、マンダリン語などで挨拶をおこない、朝礼の終わりには英語で「Safety First!(安全第一)」と声を合わせる。声が小さいとやり直し! 日本人であれば誰もが知っているラジオ体操も、それぞれが自己流でおこなうため、現場ではなんともユーモラスな光景が毎朝繰り広げられていたんだ。また日本人にとって、列をつくって並ぶことは常識だけど、海外ではそういった文化が乏しいんだって。
なので、ラジオ体操の後に作業員全員が整列して、肩もみ、肩たたきを行っていた風景は、現地の人から見ると異様だったのかも。でも、おかげで、出面(作業員の数)のカウントはしやすかったとか。

中央の卵型をした劇場は、一本の柱だけで支えられているようですが、大丈夫なのですか?
フュージョンポリスの中央に設置された卵型の劇場は、鉄筋コンクリートが中に入っている直径2.5メートル、厚さ55mmの銅管柱1本で支えられているんだ。そのため全体の形状は卵というより、棒付キャンディーを立てたような外観をしているんだけど、構造的にはなんの問題もないんだ。それでも様々な要素が絡まって起こる揺れを考慮して、作業員40人が工事中の劇場内に集まり、みんなで一斉にジャンプして強度の確認を行ったんだ。こうしたローテクともいえる作業も、時には非常に重要な役割を果たすんだね。ちなみに銅管の先端には、19トンの鉄兜(鋳鉄製の部材)が載っていて、劇場を固定している4本の角(柱)を支持している。ここで支える荷重は4本の合計で約500トンで、ジャンボジェット機とほぼ同じ重さなんだ。

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03.すごい!そんな技術が?

フュージョンポリスはいくつのビルで構成されているのですか?
フュージョンポリスは、デザインの異なる3棟の高層ビルが、互いに寄り添うようにして立っているんだ。これはシンガポールの熱帯雨林気候を考慮に入れた配置で、ビルの合間に風通しのよい日陰の小路を確保するためなんだ。また、3棟には3本のブリッジが交差して架かり、利用者は上層階でもビルからビルへの水平移動ができるようになっているんだ。建物にはそれぞれの固有振動数というものがあり、静止しているように見える建物も実際は回転するように揺れているんだけど、各ブリッジは、船に乗る時の桟橋のように、揺れに対して対応できるような構造になっているんだって。こうした複雑な設計を可能にしているのが、各棟の構造をになっている「スーパーストラクチャー方式」なんだよ。

スーパーストラクチャー方式にはどのような特徴があるのですか?
スーパーストラクチャーとは、少数の高強度な柱と梁に力を集中させる方式で、フュージョンポリスの場合、それをさらに洗練させて、コア柱(中心部に通った高強度な柱)と、10階ごとのスーパースラブ(梁となる人工地盤)のみで建物全体を支持しているんだ。つまりスーパースラブは、コア柱のみを軸にして、飛び込み台の板のように延びていることになるのさ。そのため、スーパースラブの端は前もって上向きに反らし、上層階の床荷重がかかってもスーパースラブが撓まないようになっているんだ。こうした反りのことを「むくり」と呼び、構造計算によってその程度を決定するんだけど、実際は不確定要素が多く、熟練の技師たちが長年の経験からむくりの程度を最終的に決定しているんだ。

コンクリートを氷で冷したり、ヒーターや保温材で囲って暖めたりしたって本当ですか?

直径や厚さが1メートルを超えるような柱や壁には、高強度コンクリートが使われているんだ。セメント成分が化学反応で発熱して、コンクリートの表面と内部に大きな温度差が生じると、ひび割れが発生するので、表面部分の熱が早く冷めないようヒーターや保温材で囲って保温して内と外の温度差を27℃以下に抑え、ひび割れを防止する必要があるんだって。
また、超高強度コンクリートはセメント量が多く、発熱量が大
きいので、コンクリートの練り混ぜの作業時に使用する水に氷
を混ぜて、出来るだけ初期温度を下げて現場に運搬するんだ。
フュージョンポリス建物のコア部分の壁は、最大1500mmの厚さがあって、そこにはグレード60(約60N/mm2※ )のコンクリート、劇場を支える直径2.5mの柱の中にはグレード80(約80N/mm2)のコンクリートを打設する設計になっていたので、コンクリートの温度管理は重要なチェックポイントの一つだったんだ。

※N/mm2は,コンクリート1mm2あたり何Nの荷重に耐えられるかを表す単位。約9.81N=1kg

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04.その伝説ほんと?

空飛ぶUFO!?
UFOのようなデザインの劇場の外壁面積は約4000m2。その表面には、2540個のLSD(発光ダイオード照明)がちりばめられているんだ。一般照明よりは寿命が長いといえ、10年近くで交換時期が到来。その時はと言うと、スパイダーマンと呼ばれる職人(ほとんどの人が山登りを趣味としているようです)が、劇場の外壁に等間隔に取り付けられているフックに安全帯のロープを引っ掛けながら交換位置まで移動していき、交換するんだ。フックは外壁のメンテナンス作業には欠かせないので、頑丈にできているんだよ。ステンレス製で、500kgの物体がぶらさがっても大丈夫だし、何かがぶつかって1tの衝撃が加わっても、外れないんだって。夜になると、この劇場の外壁全体に灯りがともるんで、UFOが飛んでいるように見えるんだ。
バーチャル体験とは何ですか?
フュージョンポリスの建物は複雑な形状だよね。だから、構造計算から現場の組み立て手順の確定まで、コンピューターが頼り。特に、建設にあたっては、3次元CADによる「見える化」の威力はもう絶大。画面を見るだけで、言葉や2次元の画像では表現しづらい複雑な計画を瞬時に複数の相手に伝えることができたんだ。まさに以心伝心で、「見える化」作戦でスタッフの知恵も結集できたし、作業員さんにも新工法や施工計画を確実に伝えることができたんだ。これって、まさにバーチャル体験だよね。

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