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所在地 埼玉県春日部市 発注者 国土交通省江戸川河川事務所 設計 国土交通省江戸川河川事務所、パシフィックコンサルタンツ 竣工 1998年8月 構造・規模 設置深度50m、断面形状10.6m、延長6.3km


- ひとことで言うと世界最大規模の洪水防止施設というところかな。「放水路」とは、氾濫した河川の水を取り込み、他の川に排水することで浸水被害をおさえる人工水路のことなんだけど、「首都圏外郭放水路」の特徴は、それが地下を走っているということ。埼玉県を東西に横切る国道16号に沿うカタチで、深さ50メートルの地中を、直径10メートルのトンネル水路が、6,3キロにわたって走っているんだ。また各河川に連結した立坑は、なんと直径30メートルで深さは70メートルにおよぶ巨大マンホールのようなシロモノ。氾濫した河川の水は、この立坑に落下して地下水路へと流れ込み、江戸川へ排水されるという仕組みになっているんだ。

- 首都圏外郭放水路が走る埼玉県東部、中川を中心とした流域は、昔から大雨による水害に悩まされてきたんだ。もともと田んぼだったところを埋め立てたうえ、急激に住宅が建ち並ぶようになったから、地盤沈下が進んで、ちょっとしたことで水がたまってしまうというわけ。そこで以前から放水路の建設が検討されていたんだけど、地上を走る一般的な放水路では、用地買収や地域の分断などで、莫大なコストと時間がかかってしまう。首都圏外郭放水路が、地下放水路方式を採用しているのは、そうした理由からなんだ。

- 2004年(平成16年)に戦後最大の勢力で上陸した台風22号は覚えてるだろ。幸い関東地方を縦断した頃には勢力が弱まったんだけど、それでも流域の平均雨量は193,9ミリに達する記録的な豪雨となったんだ。そこで外郭放水路は、全長6,3キロメートルのうち、当時完成済みだった3,3キロのみを稼働させて洪水調整を開始。30時間あまり降り続いた豪雨のなか、河川からあふれた水は次々と放水路に流入し、およそ700万トンもの排水に成功したんだ。その効果は放水路ができる前と比べると一目瞭然。2000年(平成12年)の台風(流域平均雨量159,5ミリ)では浸水家屋が236戸にのぼったんだけど、放水路が稼働したこの時は、平均雨量がより多かったにもかかわらず、14戸に激減したんだ。これで人々は、首都圏外郭放水路の威力を痛感したんだよ。

- 首都圏外郭放水路は2006年(平成18年)6月に完成。1993年(平成5年)3月の建設開始から13年におよぶ大事業だったんだ。ただし実際の稼動は2002年(平成14年)6月から段階的におこなわれていて、現在まで38回も浸水被害をおさえているんだ。

- トンネルの掘削工事には、現在、地下鉄や下水道工事などでも主流となっている「シールドマシン」を使用したんだ。これは円筒状をした巨大な掘削機で、前面についたカッター板を回転させて岩盤を削りながら進んでいくというもの。従来のように地上から掘り起こす必要がないから、首都圏外郭水路のように、地上に住居が建ち並ぶところでは、非常に便利なんだ。マシンの内部では、削り取った土砂を随時地上へ送ることができ、さらにトンネルの壁を自動的に組み立てることもできるんだ。

- 凄いだろ。トンネルの壁は「セグメント」と呼ばれるコンクリート状の部品でできているんだけど、この「セグメント」は、あらかじめトンネル用の部品として製造された、いわば規格品なんだ。だからお互いをブロックのように組み合わせるだけで、簡単にトンネルができあがっていくというわけ。接合部分は「ほぞ」のようにかみ合っているから、強度的にも申し分なし。こうした工程がすべて自動的におこなわれるんだから、現在の土木建築の技術には驚くばかりだね。ところで、シールドマシンで掘削した汚泥は、これまで産業廃棄物として処分されていたんだけど、今回は江戸川の堤防の盛り土として再利用されているよ。これも今回が初めての試みなんだ。

- 本当だよ。首都圏外郭放水路は大きく3つの機能で構成されているんだ。地上の溢れた洪水を地下に取り込む機能。水を地下空間に溜めておく機能。そして貯まった水を吐き出す機能。そのなかで、古代ギリシアの神殿のような場所は、水を地下空間に溜めておく機能を担う「調圧水槽」という施設なんだ。水路から流れこんで来た水の勢いをいったん弱めて、スムーズに排水をおこなうための待機場所といったところかな。

- 「調圧水槽」の内部は幅78メートル、長さ177メートル、高さは25,4メートルにもおよぶんだ。これほどの巨大空間を地中深くに建てるとき、注意しなければいけないのが、アップリフト(揚圧力)という力。地下水をふくんだ地中には、下から上に向かって圧力が働いて、これは「調圧水槽」を浮き上がらせるほど強力なものなんだ。つまりアップクリフト対策として、何本も柱が立てられているというわけ。柱の数は全部で59本あり、もちろん鉄筋コンクリート製。重さは1本500トンにもなる。他にも天井や床の厚みを増やすなど、アップクリフトを上回る荷重を確保するよう工夫がされているんだ。ちなみにこの「調圧水槽」は、ドラマや映画の撮影現場としてもよく使われているみたいだよ。