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所在地 トルコ共和国イスタンブール市 発注者 トルコ共和国運輸通信省・鉄道・港湾・空港建設総局(DLH) 竣工 2012年(予定) 構造・規模 沈埋トンネル/1,387m
シールドトンネル/総延長:18,720m(9,360m×2〈複線〉)


- トルコ第一の都市イスタンブール。その中央に横たわるのが、街をアジア側とヨーロッパ側のふたつに分断しているボスポラス海峡だ。東西の文化が交わる要衝として、古くから街の繁栄を担ってきたボスポラス海峡は、その反面で、人々の交通の障害となり、橋梁や連絡船の桟橋周辺は、慢性的な交通渋滞に悩まされていた。さらに排気ガスによる大気汚染やエネルギーの過剰消費といった環境問題も深刻化。ボスポラス海峡横断鉄道トンネルの建設は、こうした問題を大幅に解消する第3の交通路として、人々が長い間求めてきた、悲願ともいえるプロジェクトなんだ。

- ボスポラス海峡横断鉄道トンネルの総延長は13.56km。そのなかで海峡を横断する海底トンネルはわずか1,387mに過ぎず、大半が街の地下トンネルとなっている。つまりボスポラス海峡横断鉄道トンネルは、ただ海峡を横断するだけではなく、イスタンブールの東西を一本で結ぶ、街の大動脈となるべく構想されているんだ。世界でも前例のないこの大規模な建設プロジェクトで、設計と施工の中心を担っているのが日本の大成建設。2004年に着工され現在工事が進められている。日本の高度な土木建築技術は、ここでも大きな役割を果たしているんだ。

- トンネルの建設には様々な工法があり、ボスポラス海峡を横断する海底トンネルでは、「沈埋(ちんまい)トンネル」と呼ばれる工法を採用している。これは、あらかじめ地上で製作した鉄筋コンクリート製のトンネルを、文字どおり海底に沈めて埋めていくというもの。その際に、長大なトンネルの躯体を、扱いやすいよういくつかに分割する。この分割したものを「函体(かんたい)」といい、これを海底にひとつずつ沈設しながら、随時、接合させていくんだ。今回の工事では、全部で11個の函体が接合しながら、1,378mの海底トンネルを形成しているんだ。

- ボスポラス海峡は5ノット(秒速約2.6m)の激しい潮流に加え、水深の上層と下層で流れの向きが変わるため、正確な気象情報が不可欠となる。そこで大成建設は、48時間先の潮流の変化を予測する「流況予報システム」を独自に開発。最新の現地データによって、時々刻々と変化する気象状況を確認し、作業を開始するか否かの判定を下していったんだ。こうして2007年3月に1本目の函体を海底に沈設。6月には水深44.5m地点で最初の函体の接合に成功し、米国サンフランシスコ湾にあるBARTトンネルを抜いて、水中接合の世界最深記録を樹立。さらに2008年9月には最後の函体(11本目)を沈設し、沈埋トンネルは陸上部から掘り進められるシールドトンネルとのドッキングを待っているんだ。

- 沈埋トンネル工法でもっとも大事なのが、海底の正確な位置に函体を沈設させること。そのため、今回の工事では「沈埋函位置測定システム」が大きな役割を果たしているんだ。海上に運ばれた函体は、まずGPS(人工衛星を利用した位置情報システム)によって沈設位置に誘導される。次にマルチファンビーム(超高密度デジタル地形調査機)が海中でより正確な位置を把握し、最後に三次元誘導装置によってミリ単位の微調整がおこなわれ、函体は完璧な精度で所定の位置に着定することができるというわけなんだ。

- 海底における函体同士の接合には「水圧接合」をおこなっている。これは水圧の力を利用することで、ふたつの函体を強力に密着させるというもの。接合前のふたつの函体は、まだバルクヘッドと呼ばれる隔壁が前後に閉まった状態にある。その状態で既設函体に付いたジャッキが新たな函体を引き寄せると、接着面のゴムガスケットが圧縮され、バルクヘッドの間に海水が密閉された状態となる。これを一気に排水することで、海水圧の不均衡が生じて圧縮度がさらに高まり、ふたつの函体は完全な密着状態となるんだ。こうした作業の繰り返しによって、函体はひとつずつ連なっていき、次第にトンネルとしての形状を整えていくというわけなんだ。

- ボスポラス海峡横断鉄道トンネルの大半を占める地下トンネルの建設では、「沈埋トンネル工法」と異なり、「シールド・トンネル工法」を採用している。これはシールド・マシンと呼ばれる先端にカッターの付いた掘削機が、地中を掘削しながら、同時にトンネルのセグメント(外壁の一単位)を貼り付けていく工法で、現代のトンネル建設の主流となっているんだ。今回、アジア側で使用された2台のシールド・マシンには、それぞれ近代トルコの英雄・アタチュルクとオスマントルコ帝国の第9代スルタン・セリム1世の名が冠せられている。こうしたところにも、トルコの人々の海峡横断トンネルにかける熱い気持が込められていると言えるだろうね。

- ボスポラス海峡横断鉄道トンネルには、アジア側にひとつ、ヨーロッパ側に3つの駅が新設される予定となっている。しかし街自体が歴史博物館ともいえるイスタンブールには、多くの歴史的建造物や街並みが現存しており、工事に先立って、建設現場の大規模な遺跡調査がおこなわれることになったんだ。そのため予定より大幅に工程が遅れることになったんだけど、工事は文化財保護や環境保護を最優先として、現在も慎重におこなわれているんだ。