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新可動堰 所在地 新潟県燕市 発注者 国土交通省北陸地方整備局


- 新潟県新潟市から長岡市にかけて、越後平野全域を水害から守り続ける治水の要、それが大河津分水。かつての信濃川は、日本海沿岸に沿って伸びる丘陵・砂丘地帯によってスムーズに日本海に流れ出ることができないため、越後平野を蛇行して流れ、たびたび洪水を起こしていたんだ。このため、越後平野の上流で信濃川が日本海に一番近づく場所に人工河川を造り、信濃川の洪水を直接日本海へ流しているんだ。この大河津分水は、日本でも有数の規模の分水施設。大河津分水がなかった時は、信濃川の大氾濫によって平均3~4年に1回は甚大な水害を被っていたが、完成してからはほとんど水害は抑えられ、越後平野の目覚ましい発展を支えてきたんだ。

- 大河津分水は、信濃川本流側の堰である洗堰と分水路側の堰である可動堰の二つを操作することで、信濃川本流の水量をコントロールしているんだ。通常時は可動堰も洗堰も開いているんだけど、信濃川の下流域が洪水の時には、洗堰を閉じ、可動堰を開け、大河津分水路により全量を日本海へ流すんだ。逆に下流域が渇水の時には洗堰を開け、可動堰を閉じ、全量を洗堰から下流へ流す仕組みになっているんだ。

- 大河津分水の歴史はとても古い。江戸時代中期から約200年にわたる住民の工事請願が認められた1909(明治42)年に本格着工した。工事が始まってからも、地滑りや自在堰の陥没など幾多の困難を乗り越え、22年の歳月をかけ1931(昭和6)年にようやく完成したんだ。数々の試行錯誤を経て、今の大河津分水が存在するというわけ。分水路は、信濃川が日本海に一番近づく大河津から寺泊海岸までの約10kmを掘削して造られたもので、その掘削土量は2,880万m3にも及ぶんだ。この量は、新潟県庁の約150個分にも相当する膨大な量で、工事にかかわった人手も述べ1,000万人に及ぶなど、世紀の大土木工事と言われたんだ。

- 可動堰は、1931(昭和6)年の完成以来70余年にわたり越後平野の安全を守り続けてきたわけだけど、現在では至る所で老朽化が進んできているんだ。堰基礎下部に連続した空洞が発生しているし、堰柱・管理橋の劣化や、架台・ゲートの広範囲な腐食、さらには堰上下流の河床低下が進行し、堰の安全性はひどく低下している。もし可動堰が倒壊してしまったら、治水・利水の両面で、大被害が発生することが想定されているんだ。だから一刻も早く、安全性の高い可動堰に改築する事が必要なんだ。ちなみに新しい可動堰は、現在の可動堰を機能させながらコストを軽減し、安全に工事が出来るようにするため、現在の可動堰より400mほど下流の、河道中央に建設される予定だよ。

- 新しい可動堰は、景観、構造、維持管理、コストなどから総合的に検討した結果、ラジアルゲート方式が採用されているんだ。ラジアルゲート方式とは、表面が円弧上で、その曲線の中心を軸として回転する事によりゲートが開閉する構造のこと。ダムの放流口などにはよく使われているけど、河川の堰では珍しい形式なんだ。堰上部に大規模な操作室がないため、堰全体の高さが抑えられるから、国定公園の弥彦山や「日本のさくらの名所100選」の桜並木などの周辺環境と調和するし、安定感もある。また、昇降装置などが不要で、維持管理作業も容易。まさにメリットの豊富な構造になっているんだ。

- 先に述べたラジアルゲート方式のおかげで、堰自体の安定性は増しているんだ。阪神大震災の後、構造物に対する耐震設計は見直されてきているけど、河川の構造物についてもそれは例外ではないんだ。新可動堰は、新潟県中越大震災クラスの地震にも耐えられる設計を導入しており、より高いレベルの震度にも対応した構造になっているよ。「地震でも壊れない」「丈夫で長持ちする」、安心できる設計なんだ。

- そうなんだ。可動堰改築のための掘削工事を行っていたとき、国道116号大河津橋を中心とした範囲から、縄文時代晩期(3,000年前)から古墳時代後期(1,700年前)のものと見られる土器片や、住居の柱跡と考えられる穴が確認されたんだ。これは「五千石遺跡」と名付けられ、平成18年度から平成20年度までの3年間、現地での発掘調査を実施したんだ。

- もちろん。遊泳形態や遊泳能力の異なるさまざまな魚に、川を上るための環境を創りだすことも、新しい可動堰の建設では重要な課題なんだ。新しい可動堰では、魚の通り道である「魚道」を左右岸にそれぞれ3タイプ組み合わせて設置する予定。そのタイプとは、鮭などの大型遊泳魚を対象とした魚道、鮎などの大型~小型遊泳魚を対象とした魚道、小型遊泳魚とウナギなどの底生魚を対象とした魚道の3つ。この魚道形式の選定に当たっては、隣接する大河津洗堰での魚類の遡上調査結果を参考にしているんだ。長年にわたる経験の中で積み重ねてきた知識を、より確かなものとして活用することで、人間だけでなく、自然環境に配慮した施工を目指しているんだ。